株式会社半田キャステ
講師:加藤昌彦様 株式会社半田キャスティング 代表取締役(前米国NVIC社長)
題目「アメリカ中西部・片田舎でのものづくり奮戦記」
今から3年前「日本でいちばん大切にしたい会社3」の冒頭部分で紹介されていた、米国鋳物工場再建社長の壮絶な物語がとても気になっていた。昨年一度帰国された際に、米国従業員との熱い戦いの日々のお話を聴く機会があり、2014年12月末に帰国された。
1996年米国インディアナ州・ノースバーンで産声を上げた(当時豊田自動織機49%.2010年1月豊田自動織機完全子会社)リーマンショックで業績が落ち込み2010年1月再建社長として米国に送り込まれた。当時200人の従業員は加藤社長が送り込まれるので当初レイオフされるのではないかと全員が冷たい視線を送った。その後社長より「生産は継続する、雇用を守る!」と断言し、全員が安堵の表情を浮かべたという。
4D(Dangerous,Difficult,Dirty,Dark)の粉塵が舞うフォークリフト生産工場は社長の手腕で「家庭的美風を作興すべし」との号令の下、次々に改善されていった。社員も200名から翌年は400名へ大幅雇用された。
1.安全環境改善
天井大型ファン、集塵機能力倍増、安全道場、夏季飲料、夏季特別休憩時間を設置
特に65%以上が喫煙する従業員であったが、駐車場吸殻ゼロ運動を履行
2.給与福利厚生
最低賃金引き上げ、ボーナスの初めての支給。(従業員に大変喜ばれた)
管理職へのトヨタ車貸与(憧れのトヨタ自動車に乗ることが出来た)
社内診療所設置(米国の医療費はとても高い。ある月、1ヶ月で6000万円の請求がきた。診療所開設後、年間医療費1500万円の圧縮)
家族向け会社イベント(両親の働く会社に子供が誇りに思えるようになった)
バナナ政策(朝食をほとんど取れない貧しい状況だったので、先ずバナナを食堂においてみて、その後、人事部長がオレンジ、りんごを置き、最終的には社員がトマト・きゅうりも置くようになり良い連鎖が起きた)
3.コミュニケーション
・職制との昼食懇談会の実施
・誕生月従業員との食事会
・個室の撤廃→大部屋化
上記の施策が見事にあたり、月間離職率が40%から1年間で2%へ、災害発生率は25%から翌年は12%へ、工程内不良は60%から翌年10%以下へ改善されていき、2014年日本に帰国するまでには、さらに2%以下に落ち着いた。
NVIC駐在5年間、トコトン社長と従業員が腹を割って話せる「場」を創り、そこから出てくる 「不平、不満」を一つずつ丁寧に解決していき、社員満足度を上げ、社員の家族が誇らしく思えるような業績の伸びと社風になっていった。加藤社長の後任には、信頼していた部下の米国副社長が現在NVIC社長をされている。帰国後、半田キャスティング社長として、米国と同様、従業員一人ずつ対話をされ業務改善を行っておられる。